TADASHI(@CHAMELEON_1105)です。
テレビドラマが面白いのは脚本家の力ということを聞いたことがありませんか?
ドラマだけに限らず、映画やアニメなど全ての作品の元となっているのは脚本ですよね。
そんな脚本を「一度は自分で作ってみたい!」と思ったり、「どうやって作っているのだろう。」と疑問を持ったこともあると思います。
今回は脚本の書き方から始まり、脚本家になるためにはどうすればいいかまでをまとめました。
目次
脚本とは何か

脚本(シナリオ)とは一言でいうと、「作品の設計図」です。
テレビドラマの場合、脚本家(シナリオライター)が書いた脚本を設計図として、工務店の役割を果たすテレビ局や制作会社が撮影、編集、キャスティングなどを行い、それぞれの力が合わさってドラマが出来上がります。
設計図というだけあって、キャラクター作りや舞台設定、ストーリー作りと何もないところから一つの作品を作っていきます。
そう考えると、小説を書くことと同じように感じますが書く上で明確な違いがあります。
それは脚本には書き方のルールが存在するという違いです。なぜそんなルールが存在するかというと、読み手が「制作に関わる人」と限られるからです。
設計図が工務店の人たちに伝わらなければ仕事は進みませんよね。作品を作る仕事を円滑に進めるためにもルールが大切なのです。
どんな構成で作られているのか

多くの人は、脚本がどんな構成になっているのか知らないと思います。制作に関わる人しか見ることすらないので、当然ですよね。
そこで、ここでは脚本の構成について書いていきます。
脚本は、「表紙」「人物表」「本文」の3つの要素からなっていて、その中にも書き方が存在します。
それぞれ順番に見ていきましょう。
表紙

上の図のように、作品のタイトルを中心に大きく分かりやすい字体で書き、著者名(ペンネーム)を脇に書きます。
他に文字を書いたりイラストを描いた方が見栄えがいいと思うかもしれませんが、それは厳禁です。(特にコンクールなどでは絶対NGです。)
物語が全てでなく、タイトルも作品の一部でとても大事な要素なので、じっくり考えましょう。
人物表

右から、「主人公」「脇役」「端役」「エキストラ」の順に、「名前」「年齢」「職業」を一人ずつ書いていきます。もし、年齢の設定が複数ある場合は、全て書きます。(上の図を参照)
(脇役は本筋に関わる主人公以外の役、端役は本筋に関わらずセリフのある役、エキストラは本筋に関わらずセリフもない役)
基本的に、「主人公」「脇役」はフルネームで書き、「端役」は省略名、「エキストラ」は職業名などのみを記入すれば大丈夫です。
また、実際に役者が演じる登場人物のみを書いていき、名前が呼ばれるだけの人物などは書かなくて結構です。
「経歴」や「性格」も人物表には書かずに、本文で表現していってください。
本文

本文は、場所と時間を指定する「柱」、人物の動作などを示す「ト書き」、人物が話す「セリフ」の3つの要素から成り立っています。
上の図に全てが集約されているのですが、パッと見ただけではよく分からないと思うので、順番に解説していきます。
柱について
図でいうと、「〇」がついている行が柱です。
「柱」とは、シーンの場所と時間を指定するための表示で、柱には「〇」をつけるというルールがあります。
これを書く理由としては、制作に関わるスタッフの方々に脚本家が想い描いた世界観を伝え、指示するために書きます。
なので、場所と時間も具体的に記します。例えば、場所の指定は「鈴木家」という抽象的な表現でなく、「鈴木家・寝室」というように内容を明確に想像できるように書きます。
時間の指定は、「早朝」「朝」「夕」「夜」「深夜」と記し、何も書かなければ昼という設定になります。書く場所は、図のように場所の下に書きます。
他にも、シーンとシーンの間は1行空けること、同じシーンが続く時は、「〇鈴木家・リビング」を「〇同・リビング」と省略できること、回想シーンは、「〇」の直下に(回想)と書き、回想シーンが終わる時は、「〇」の直下に(回想終わり)と記すこと、というルールがあります。
ト書きについて
「ト書き」とは人物の動作や状況を記すもので、本文の中では3文字下げて書かれています。(上の図を参照)
おそらく、「~と、(行動)」ということからト書きと呼ぶようになったのだと思います。
ト書きは現在の状況を指示するので、過去形ではなく現在形で書かなければいけないということに注意してください。(過去形で書いたト書きは、作者に何らかの意図があると思われます。)
心情などはカメラで映しようがないので、人物の行動と状況説明などカメラで表現できるものだけを書きましょう。
また、主要登場人物が初登場の場合、フルネームと年齢を書き、2回目からは省略して書きましょう。(男性は「姓のみ」、女性と子供は「名のみ」で書きます。)
ルールは他にもあり、「鈴木が公園を歩く。」というト書きの場合、「鈴木、公園を歩く。」と記載します。
どっちでもいいように思いますが、テンポやリズムが出やすいという理由でずっと受け継がれているそうなので、守りましょう。
セリフについて
「セリフ」は行頭に誰のセリフなのか人物名を書き、カギ括弧の中に書きます。
ト書きのように3文字下げて書かなくていいのですが、セリフが2行以上にわたる場合は1文字下げて書きます。(上の図を参照)
回想シーンなどでは、よく「人物の声のみ」のセリフがあるかと思います。
それには3通り(場面や設定を説明するときに使う、ナレーション。登場人物の心情を語る時などに使う、モノローグ。姿はなく、電話口などで声だけ発する人。)あり、脚本ではこれらを文字で表現するので、そのルールとして「人物+(N)」はナレーション、「人物+(M)」はモノローグ、「人物+(声)」は声だけ発する人となります。
あと、細かいことですが、セリフの感情や動作を交えたセリフを表現したい時に三点リーダー「…」や傍線「―」を使いますよね。この時は、2マス分使用しなければなりません。
「?」や「!」、「!?」の時は1マス分を使い、文章がその先続くなら1マス空けます。
セリフの最後には、句点「。」をつけてカギ括弧を閉じるのが普通のように思いますが、脚本のセリフを書く時は、句点「。」はなしで、カギ括弧「」で閉めましょう。
もし、テロップ(例えば、「5年後」など)を入れたい時は、「T」と書いて、その下に入れたいテロップを書いてください。
面白い脚本の作り方

脚本がどんな構成になっているかは分かったけど、具体的にどうやって作るのだろうと思いますよね。
ルールが分かったからといって、スラスラ面白い脚本が書けたらその人は天才です。
もちろん、世の中天才ばかりではないので脚本を作ることにもいくつものパターンがあります。特に、面白い脚本の構成には様々なパターンが組み込まれています。
このパターンの中でも、映画でよく使われたりハリウッドでは当たり前のように使われている基本的な脚本構成パターン、「3幕構成」を紹介していきます。
3幕構成

3幕構成とはその名の通り、物語を第1幕、第2幕、第3幕と3つのパートに分けて書く手法で、だいたい1:2:1の割合で書きます。
第1幕は発端であり状況設定を行うパートで、視聴者にストーリーの始まり、人物の紹介、世界観を表現して理解してもらうためのものです。
その中で重要なのが、ツカミ・状況説明・動機付けです。
冒頭で事件などが起きて視聴者を引き込むのがツカミ、物語を理解するために必要な情報提供を行うのが状況説明、なぜ主人公はその目的を達成しなければならないのかという動機付けです。
この3つがキッチリ書ければ、第1幕で視聴者を自分の作品の世界へ取り込むことができるでしょう。
第2幕は中盤ともいい、3幕構成の一番長いパートです。ここでは葛藤を表現し、他人や現象などの物理的なもの、内面からくる精神的なものなど様々な葛藤を表現します。
そして、主人公が達成すべき目標のために次々とそれらの葛藤を乗り越え、突き進む姿を描くことが第2幕で重要なことです。
視聴者はここで共感や面白いといった感情が生まれ、「次はどうなるんだろう。」と作品のファンになっていきます。
このパートを面白くするテクニックとして、サブプロットを作るということがあります。
サブプロットとは物語の本筋とは異なる短期的なストーリー(派生した話である必要はあります。)のことで、物語に厚みや幅をつける役割を果たします。
例えば、主人公が挫折して克服するという人間的な成長を本筋の裏側で描いていくというようなものなどがあります。
サブプロットは、状況説明からクライマックス前まで展開すると深みのある作品に仕上げるかと思います。
あと、第2幕では大きな転回も必要です。中盤まで差し掛かると、視聴者もだんだん飽きてくるので、奇妙な事件ばかり起こっていたが事件の概要を予測できるようになるなど、今までとはガラッと展開を変えて物語の勢いをつけていきましょう。
サブプロットと大きな転回を上手く使いこなせるとクライマックスが気になり、ずっと見てしまう視聴者が増えるでしょう。
テレビドラマでも中盤の視聴率が比較的低くなる傾向があるので、初回を見てもらった視聴者さんを手放さないためにも重要なパートですね。
第3幕は今まで起きてきた様々な問題が収束していき、主人公が最大の難関を突破してクライマックスを迎えるというシーンを描きます。
ここで大事になってくるのが、ピンチ・クライマックス・完全解決の3つです。
クライマックスを一歩手前にして、これまでで最大の「ピンチ」を作ることで視聴者は主人公の気持ちになり、応援したくなる衝動にかられます。
そして、「クライマックス」はこの最大のピンチからの逆転で導かれるのが基本です。
「完全解決」は、これまでのサブプロットや張り巡らされた伏線を全て解決するということです。
何か一つでも未解決のものが残れば、視聴者は「あの話はどこにいったんだろう。」と腑に落ちません。なので、自分で蒔いた種はちゃんと回収してください。
ピンチ・クライマックス・完全解決、この3つのどれか一つでもミスをすると作品は一気に面白さを失います。
テレビドラマを見ていても、最初は面白くて最後のパートが面白くなかったら、全てが面白くなかったように感じますよね。
つまり、第3幕は作品の外見を決めるようなものです。
ここまで、3幕構成について紹介してきました。他にも脚本の構成パターンはいっぱいあるので、色々な知識を取り入れて執筆していってください。
脚本を書く能力は他でも活かせるのか

脚本を書くということは、人の心を描くということです。
様々な目線に立ち、様々な人の感情を描いていると、それは自然と相手の考えを理解するトレーニングになっています。
相手の感情を理解できれば、私生活でも周りの人といい関係を作れますし、営業などの仕事でも活かせるスキルになっていくと思います。
そして、物語を作るには論理が成り立っていることが重要なので、論理的に考えるトレーニングにもなります。
そうすると、物事の筋道の立て方も上手くなり、企画書などを書く時にも活かせますよね。
また、小説作家には脚本家を経験している人が多いことも事実です。
ストーリーの立て方や企画の立て方、キャラクター作りは小説とも共通している部分が多いので、脚本家を経験することで、緻密に構成された小説を書けるようになります。
特に、ミステリー小説作家には脚本家経験をされている方が多いようです。
脚本家としてデビューするために

脚本家になるために、特に必要な学歴や資格はなく、決まったルートもありません。
ただ、多くの脚本家がデビューまでに歩んでいるパターンとしては、この3つに絞られるかと思います。
シナリオスクールに通う
これが一番、一般的です。シナリオスクールでは、脚本を基礎から学ぶことができ、評価もしてもらえます。
スクールの講師は、現役の脚本家や出版社の方、テレビ関係の方も多く、プロから学び評価してもらえるの最大のメリットですね。
また、就職のコネクションにもなりえますので、脚本家を目指すなら王道かと思います。
公募やコンクール
最近ではインターネットが発達してきて、様々な媒体でシナリオコンクールや公募があります。
テレビ局が主催しているような大きなものだと、高額の賞金がついていて、それに入賞したりすると、テレビ局側から仕事を依頼されるといったこともあり得ます。
公募やコンクールからの脚本家デビューが一番近道かもしれませんが、競争相手が莫大な人数なので一番険しい道でもあります。
もし、自分の書いたものに自身があるのなら、インターネットをフルに使って、最短のルートで脚本家に進むのもいいと思います。
関係する会社で働く
これは、テレビ局や制作会社などに就職してから脚本家を目指すパターンです。また、有名な脚本家の事務所でアシスタントとして経験積むというのもあります。
(テレビドラマの脚本は、そのテレビ局の社員が担当している場合も多いです。)
どんな形であろうと、同じような業界で働くことによって、ノウハウを学べたり、経験を得ることができますし、脚本を書く仕事をもらえるツテなどもできてきます。
そうなれば、自分で脚本を書いて売り込みを行うこともできますよね。
まとめ
脚本は、制作関係者向けに作られているので、書き方を始めて知った人にとっては読みにくく、めんどくさい書き方だと思ったかもしれません。
しかし、制作関係者にとってはこれが読みやすく当たり前となっているので、ぜひ習得してもらいたいです。
この記事を読んだ人が、脚本家デビューを果たせたらとても嬉しく思います。
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